『消えたママ友』——「仲良しだったのに、何も知らなかった」が刺さる傑作
ミステリーのようでいて、読み終わると自分の人間関係を振り返ってしまう。野原広子さんの『消えたママ友』は、そんな後を引く一冊です。第25回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した、コミックエッセイ調の傑作。
どんな話?
いつも笑顔で、幸せそうに見えたママ友の有紀ちゃんが、ある日、子どもを置いて突然姿を消します。「男と逃げたらしい」という噂が保育園のママたちの間を駆け巡るなか、彼女と親しかったハルカ、ヨリコ、トモコの3人は、それぞれに気づき始めます——仲良しだったはずなのに、自分たちは有紀ちゃんのことを何も知らなかったと。
物語は「有紀ちゃんはなぜ消えたのか」というミステリーを軸に進みますが、本当に描かれているのは、残された側の心の中です。詮索、嫉妬、「うちはあそこまでじゃない」という安堵。ママ友という関係の、優しさと薄氷が同居した感じが、シンプルな線でどこまでも生々しく描かれます。
雑誌「レタスクラブ」での連載をまとめた単行本(KADOKAWA)は1冊完結。読書時間はそれほどかからないのに、読後の余韻は長編級です。
この漫画が「効く」人
- ママ友・職場・グループLINEなど、「表面上うまくやる関係」に疲れている人
- 「私、周りに本音を言えてないな」と気づいてしまった人
- 短くて濃い、1冊で完結する読み物を探している人
ひとこと処方箋
この作品の効能は「共感」より「点検」です。読み終わったあと、自分が誰に本音を話せているか、そっと数えたくなる。人間関係にモヤモヤしている時期に読むと、モヤの正体に輪郭がつきます。1冊完結なので、今夜のうちに読み切れます。